不正咬合 異常咬合とは?
2024.08.23お知らせ
不正咬合、異常咬合とは
Normalに対比する言葉はabnormal である。「Abnormal」は、異常を意味するが、一般的には悪い、望ましくない場合に用いられ、「普通とはちがうこと、普通ではないこと」を表現すると群書に記されている。歯並びの悪いことが、異常で、普通とは考えられない、そして悪いことであれば、これを異常咬合と呼ぶことができる。しかし、程度の差はあれ、歯並びの悪いことはごく普通のことである。一方、「Malocclusion」の接頭辞である mal は、bad/wrong/i11「悪い」「病気」という意味もあるが、improper、inadequate「不適当な」「不適切な」「不十分な」などの意味も有する。このことが、Normal occlusion に対時する言葉として Malocclusion を用いる理由となったものと考える。
20 世紀中ごろから「Malocclusion(不正咬合)」は、一部の先天性異常を除き、「病気、あるいは病的な状態とみなすことはできないとの意見が出始め、「正常咬合と不正咬合」を一般医科での「健康と病気」と同じような関係で捉えることはできないとの考えから矯正治療の診断を始め、矯正治療そのものを根本的に考え直す機運が高まった。その結果、前述の通り疾患志向型から問題志向型への診断へとパラダイムシフトしていくことになったのである。そして、Graber の『Orthodontics-Current Principles
and Techniques-』の第 5 版では、「Nalocclusion」を「Orthodontic condition」、さらには「Dentofacial traits」(顎顔面の特徴)に置き換えることが推奨されるようになった。極端な例では、「Malocclusion」の用語を完全に排除した本の出現をみるようになったのである(Enhancement Orthodontics)。
なお、日本語では、歯並びの悪いことを歯科矯正学では古くから異常咬合とは言わずに、不正咬合と呼んでいる。これは、「Malocclusion」を訳したためと考えられる。
しかし、「不正」という言葉は「正しくないこと、間違っていること」との意味で、並びの悪いことを「正しくないこと、間違っていること」とするにも疑問が残る。また、この不正という言葉には、道義的、倫理的な意味が含まれることから適正でないとする意見もある。いずれにしても不正咬合を疾患、病気として捉えるのは控えるべきで、不正咬合すべてを治すべき歯並びとする必要もない。
監修 葛西ジェム矯正歯科