マルチブラケット装置の原型
2023.11.14お知らせ
マルチブラケット装置の変遷
マルチブラケット装置の原型は、AngleがE-arch applianceとして紹介したものから始まるといえる。その後、pin and tube appliance、さらに022”(インチ)x036”(インチ)のブラケットスロットを用いたribbon arch applianceによって3次元的な歯の移動の試みが行われた。しかし、当時は角型ワイヤー(レクトアンギュラーワイヤー)を咬合面から挿入していたため3次元のコントロールは不十分であった。
エッジワイズの語源は、edgewise,すなわちedge forward, edgeを前に向けて、ワイヤーをブラケットに挿入するという意味からきている。
スタンダードエッジワイズとは、.022”×.028”か.018”×.025”のいずれかのブラケットを用いて、丸型、角型の主線を3平面(ファースト、セコンド、サードオーダーベンド)において屈曲して歯の三次元的移動を行う方法であるが、スタンダードの持つ言葉の意味から遅かれ早かれSWAがスタンダードエッジワイズとなるのは時間の問題である。
SWAまでの時代背景として、edgewiseの意味、edgewise bracketの登場、022 slotと018 slotの違い、抜歯症例としてのテクニックの変遷、lightforceの概念の導入などが本格矯正装置への影響を与え、現在、よく耳にするstandard edgewiseというものの一つの体系を作り上げてきたのである。
エッジワイズ法の変遷
1728年:Pierre Fauchardのlabial appliance
1887年:AngleのE-arch appliance (expansion arch)
1912年:pin and tube appliance
1916年:ribbon arch appliance – 022 x 036 flatwise
1929年:edgewise appliance
1944年:Tweed technique
1950,60年代:Bilogicalの歯の移動への関心
ループ、ラウンドワイヤーでの治療の限界
1960-80、90年代:Standard edgewiseなる方法の台頭
ワイヤーベンドが強調された時代
1980-現在:SWAの出現、普及
スタンダードワイズ法におけるアーチワイヤーの屈曲
(1)ファーストオーダーベンド
正常と想定される咬合の歯列に沿って、アーチワイヤー水平面を変化させることなく唇(頬)舌的に屈曲し、歯列弓内の各歯を移動させるものである。ラウンドワイヤー、レクトアンギュラーワイヤーともに付与する最も基本的な屈曲である。
(2)セカンドオーダーベンド
主に歯軸を遠心に傾斜されるため、アーチワイヤーを垂直方向に屈曲するものでディップバックベンドとも呼ばれる。ラウンドワイヤー、レクトアンギュラーワイヤーに付与する。
(3)サードオーダーベンド
歯根および歯冠の唇(頬)舌的移動のため、アーチワイヤーの水平面に捻じれを与えるもので、トルクとも呼ばれるものである。レクトアンギュラーワイヤーのみに付与が可能である。
エッジワイズ法には、いくつかの流派が見られるが、現在では主線を屈曲する方法(スタンダードエッジワイズ法)と屈曲しない方法(ストレートワイヤーエッジワイズ法)に大きく分けられる。各々の流派により歯の移動方法、矯正力の選択、固定に対する考え方、ブラケットのデザインなどに多少の違いはあるものの、エッジワイズブラケットに角型ワイヤー(レクトアンギュラーワイヤー)を私用して歯の移動をできるだけ歯体に、かつ三次元的に行い、理想としている歯列の咬合の完成を目的としている点では同じである。
監修 葛西ジェム矯正歯科