セファロ分析(頭部X線規格写真)
2025.11.14コラム
セファロ分析とは?
〜矯正治療の「設計図」をつくる、とても大切な検査です〜
矯正治療では、歯ならびだけでなく、お顔の骨格のバランスや噛み合わせの軸まで細かく確認する必要があります。
そのために行うのが、セファロ(頭部X線規格写真)分析です。
「セファロ」とは、頭の骨を一定の角度で正確に撮影する特別なレントゲンのことで、
これをもとに、顎の位置・歯の角度・横顔のバランスを数字として評価します。
なぜセファロ分析が必要なの?
1. お顔全体のバランスが分かる
前歯だけを見ると整っているように見えても、
顎の位置や骨格の傾きがアンバランスなことがあります。
セファロは、お顔を“横から見た状態”で評価でき、
**横顔のライン(Eライン)**や
上顎・下顎の前後バランスがひと目で分かります。
2. どんな動きをさせるべきかが判断できる
矯正治療では、
-
前歯をどのくらい後ろへ下げられるか
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奥歯の位置を動かせるか
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抜歯が必要か 非抜歯でいけるか
-
口元がどれくらい下がるか
といった大切な判断をします。
セファロ分析は、これらを数字で可視化し、治療方針をより正確に決める手がかりになります。
3. 治療前後の変化を比べられる
治療前の状態と、治療が終わったあとのセファロを重ねて比べると、
どこがどのくらい変化したのかが客観的に分かります。
歯だけではなく、顎の位置や噛み合わせがどう変わったのか、
患者さんご自身でも確認できます。

セファロで分かること
セファロ分析では、次のような項目を測ります。
■ 骨格のバランス
-
上顎の位置(SNA角)
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下顎の位置(SNB角)
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上下のバランス(ANB角)
これにより、
「出っ歯なのか」「受け口なのか」「上下の骨格のずれはどの程度か」
を判断します。
■ 歯の角度・向き
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前歯が前に倒れているのか
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後ろに倒れているのか
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奥歯の傾きはどうか
歯の角度は口元の見た目にも大きく関わるため、
美しい横顔づくりに欠かせない情報です。
■ 横顔のバランス
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唇の位置
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顎先の位置
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鼻・唇・顎のライン(Eライン)
「横顔をスッキリさせたい」
「口元の突出感を改善したい」
といった希望の実現に、非常に重要なデータです。
セファロ分析は“治療のカーナビ”のようなもの
矯正治療は、ただ歯を並べるだけではありません。
どこにゴールを置くのか、どのルートで動かすのかを間違うと、
見た目だけでなく将来的な噛み合わせにも影響します。
セファロ分析は、
**「治療の設計図」兼「カーナビ」**のような役割を果たします。
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現在地(今の状態)
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ゴール(理想の噛み合わせ・横顔)
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到達方法(治療計画)
これらを明確にすることで、
安全に・効率よく・長期的に安定する矯正治療が行えます。
患者さんへのメッセージ
「レントゲンを撮るだけなのに、そんなに違うの?」
と驚かれることも多いですが、
セファロ分析があるからこそ、
一人ひとりに合った精度の高い治療が実現できます。
不安なことや分からない点があれば、
検査の際にいつでも医師にお尋ねください。
画像をお見せしながら、丁寧にご説明します。
一般歯科医がおこなうマウスピース矯正では、セファロの自動計測を行っているようです。
セファロの“自動計測”は大丈夫?
〜AIやデジタル技術が進んでも、最終判断は必ず“人の目”です〜
最近は、セファロ(頭部X線規格写真)をAIで自動的に分析するシステムを導入している医院が増えています。
便利な技術ですが、「本当に正確なの?」と心配されることもあります。
結論からいうと、
自動計測は“補助ツール”として便利だが、最終的な診断は必ず専門医が行うことが大切。
この点を理解しておけば安心できます。
■ なぜ自動計測だけに頼ると不安なのか?
1. 顔や骨格には個人差が大きい
AIは平均的なデータをもとにポイントを拾いますが、
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骨格的な偏位
-
顎関節の位置の違い
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歯の形態や角度
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成長期か成熟期か
などで形が大きく異なることがあります。
とくに、
出っ歯(Ⅱ級)・受け口(Ⅲ級)・非対称などの“特徴のある症例”では、AIの誤差が出やすいことがあります。
2. 撮影のわずかなズレでも計測値が変わる
セファロは「同じ角度」で撮影することが重要ですが、
姿勢や頭位が少し変わるだけで、
数値や角度がズレることがあります。
AIは“写ったまま”を計測するため、
撮影の正確さを人が管理できていないと誤差が重なる可能性があります。
3. 症例ごとの意図をAIは理解できない
たとえば、
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抜歯か非抜歯か
-
前歯をどれだけ後退させるか
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横顔をどこまで整えるか
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噛み合わせの改善をどこまで行うか
これらは、“患者さんの悩み”や“骨格の成長”をふまえて総合的に判断する必要があります。
AI計測は数値を出してくれますが、
「何を目指すか」という設計判断は、必ず人間の診断が必要です。
■ 自動計測はどう使うと安全なのか?
-
専門医が目で確認し、必要があれば手修正する
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AIが拾いにくいポイント(ANS、Gn、下顎角など)を人が補正する
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成長予測・横顔のバランス分析など、“治療の核心”は必ず人が判断
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経過観察では自動計測を使い、効率化する(時間短縮・比較しやすい)
つまり、
AI=便利な電卓
専門医=最終判断を行う人間の頭脳
という関係です。
■ 自動計測を導入していても「安心できる医院」とは?
以下のポイントがあると安心です:
-
AI計測値をそのまま使わず、医師が必ずチェックしている
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重要なポイントは手で補正している
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写真の撮影姿勢が適切で、技術者が品質管理している
-
治療方針を“数値だけ”で決めていない
-
横顔の変化や口元の改善など、最終イメージを説明してくれる
これらが整っていれば、自動計測を使っていても何も問題ありません。
■ 患者さんへのメッセージ
AIによる自動計測はドク断のスピードとデータの比較にはとても役立ちます。
しかし、矯正治療は“数値の操作”だけではなく、
あなたの顔立ち・骨格・生活に合わせた総合的な設計が必要です。
当院では、
AIの便利さは活かしつつ、
最終的な診断は必ず専門の矯正医が行い、
精度と安全性を重視しています。
心配な点があれば、どうぞ遠慮なくご質問ください。
あなたにとって一番良い治療を一緒に考えていきます。
最終的に矯正医の判断が重要となりますので、大学病院の矯正科で研鑽を積んだ
ドクターの判断が重要になりますので、矯正歯科専門医院にご相談ください。
監修 葛西ジェム矯正歯科



