「生活の質を高める医療」──疾病を治すことから、人を支えることへ
2025.11.06コラム
🩺 「生活の質を高める医療」──疾病を治すことから、人を支えることへ
私たち医療者の目標は、単に病気を治すことではありません。
本当の目的は、治療を通じてその人の生活の質(Quality of Life:QOL)を高めること、
そして健康に生きる力を支えることです。

🔹 疾病を治すとは
「疾病を治す」とは、
痛みや不具合などの身体的な問題を医学的に改善することを意味します。
矯正歯科でいえば、
- 噛み合わせを整える
- 歯列をきれいに並べる
- 顎の位置を正しく導く
といった、機能的・構造的な健康を回復することが中心です。
これはとても大切な医療の基本です。
しかし、それだけでは“健康”は完成しません。
🔹 人を治すとは
「人を治す」とは、
その人が自分らしく、快適に、前向きに生きられる状態を取り戻すこと。
つまり、身体だけでなく、心・社会・生活すべてを含めて支える医療です。
🦷 矯正治療の中での違い
例えば、同じ「歯並びの乱れ」で来院した2人の患者さんがいたとします。
- Aさんは「人前で笑えない」という悩み。
- Bさんは「噛みにくくて食事がつらい」という悩み。
治療の内容は似ていても、Aさんのゴールは自信を取り戻すこと、
Bさんのゴールは快適に食事できること。
どちらも「歯を動かす」ことが目的ではなく、
生活の質を高めるための手段なのです。

🌿 健康とは何か
世界保健機関(WHO)は「健康とは、単に病気がないことではなく、
身体的・精神的・社会的に良好な状態である」と定義しています。
この「良好な状態」とは、その人自身の物語の中での幸福感でもあります。
つまり健康とは、「自分らしく生きられる力」のこと。
Narrative Based Medicine(NBM)は、
まさにこの「自分らしさに基づく健康」を支える医療なのです。
💬 医療の本当の目的
病気を治すことは“スタート”であり、
その人の生活の質を高めることが“ゴール”です。
矯正治療で歯並びが整うと、
見た目が変わるだけでなく、笑顔や姿勢、人との関わり方まで変わることがあります。
それは、身体の変化を通して人生の質が上がるということ。
医療の価値は、まさにそこにあります。
監修 葛西ジェム矯正歯科



