口元を改善したい ベストな治療方法は?
2025.12.21お知らせ
マウスピース型矯正装置VSワイヤー矯正 矯正用アンカースクリュー併用
現時点の技術では、マウスピース矯正だけで “アンカースクリュー併用ワイヤー矯正と同等レベル” の口元改善(前歯の大幅な後退・口唇後退)を再現することは基本的に困難です。
これは推論ではなく、臨床データと大学病院レベルで共有されている事実に基づく判断です。
■ なぜマウスピース矯正では難しいのか?
① 前歯を後方へ「大きく」移動させる絶対的な固定源が不足する
前歯を後ろにしっかり引くためには、**強固な固定源(アンカー)**が必要です。
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マウスピースは樹脂素材で、歯列全体を覆っても 固定源としては弱い
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臼歯が回転したり、浮いたり、前に動いたりしやすい
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結果的に「前歯をしっかり下げたいのに、奥歯が前に流れてしまう」
これが、口元改善が弱くなりやすい根本的理由です。
② 歯の3Dコントロール(特にトルク)が弱く、後退量に限界がある
前歯を後ろに下げる際には トルクコントロール(角度の維持) が極めて重要です。
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マウスピースは前歯の根のコントロール(トルク)が苦手
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結果として 歯が倒れながら後ろに動く(唇側トルクロス)
→ プロファイル改善量が小さくなる
→ セットアップの後退量どおり動かない
大学病院の臨床でも、大幅な口元改善では必ずワイヤー治療の方が精度が高いという認識が共有されています。
③ マウスピース矯正は「抜歯症例」「大きな口元改善」に向かない
マウスピースは
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奥歯の位置を強く固定したい
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前歯を大きく後退したい(3〜6mm以上)
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口元をしっかり下げたい
こういった治療が最も苦手です。
一方、ワイヤー+アンカースクリューは
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奥歯を全く動かさず固定できる
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前歯を骨内で適正なトルクを保ちつつ大きく後退できる
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これによって 鼻下の影が改善・Eラインが整う
このように、口元の劇的改善が可能です。
■ では、マウスピースでも口元改善が少しはできる?
はい、「少量(1〜2mm程度) の後退」であれば可能な場合があります。
ただし条件付きです:
■ マウスピースで可能なレベル
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叢生の解消による自然な口元後退
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非抜歯 or 小臼歯抜歯での軽度の前歯後退
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唇の厚みが薄い患者では少し効果が見えやすい
しかし、
■ マウスピースで難しいレベル
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3〜6mmの明確な前歯後退
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口元を大きく下げる治療(Eライン改善を明確に狙う)
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ANB過大・U1/SN過大で、骨格的にしっかり引きたい症例
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アンカースクリューレベルの強固な後方牽引が必要な症例
■ 大学病院の矯正科での実際の判断
口元改善を目的とする治療計画の際、
抜歯+アンカースクリュー併用ワイヤーが “基本治療” であり、標準治療 です。
大学病院では下記が共通認識です:
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抜歯症例の第一選択はワイヤー
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アンカースクリュー併用は前歯後退の再現性が最も高い
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マウスピース単独で同等量を再現するのは難しい
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過剰なセットアップは実際の歯の動きとズレる
■ 客観的に比較
| 項目 | マウスピース矯正 | ワイヤー矯正+TAD(アンカースクリュー) |
|---|---|---|
| 前歯の後退量 | 少ない(1〜2mm程度が限界) | 大きい(3〜6mm可) |
| 固定源 | 弱い | 非常に強固 |
| トルクコントロール | 弱い | 強い |
| 口元改善の再現性 | 低い | 高い(Eライン改善しやすい) |
| 適応 | 軽度改善向け | 口元改善を本格的に狙う症例の標準 |
■ まとめ(結論)
マウスピース矯正単独では、アンカースクリュー併用ワイヤー矯正と同レベルの口元後退は基本的に再現できない。
ただし、
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軽度の改善
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叢生の改善による自然な後退
であれば可能なこともあります。
大学病院矯正科や矯正専門医院で研修を5年以上受けた場合は、基礎研修をしっかり行います。
スキャンや画像や数値を入れて、自動ソフトに出てきた資料イコール診断とは、なりません。



