マルチブラケット装置の変換 No.2
2023.10.15お知らせ
マルチブラケット装置の変遷 その2
Light wire techniqueの台頭
特にStorey&Smith、Reitanに代表されるような研究者により強い強制力に対する生体への悪影響が指摘された。
1950~1960年代の流れ:より生物学的な配慮をするようになり、弱い持続的な矯正力が求められるようになり、lightwireという言葉が常套用語となった。さらにこの頃になると抜歯の必要性が広く理解されるようになった。
1)新しい時代の幕開け、新しい波が押し寄せてきた
lightwireの時代
022(x028)から018(x025)スロットへの移行
lightwire edgewise:Jarabackジャラバック
Bioprogressive
新しい歯の移動様式:Beggベッグ
2)わが国への影響(わが国への全体環装置の導入)
この時代に日本に本格的な全帯環装置が導入された。日歯大のBegg法、医科歯科大のJaraback法である。従って、これ以前に教育を受けたものは、現在用いられている矯正装置になじみがなく、この時代に教育を受けた人達はlightwir techniqueという言葉に強く影響を受けている。両方のテクニックの特徴は力を弱くするためにループを多用し、太いワイヤーを極力使用しないことである。ループの力学的研究や歯の移動に伴う組織的研究が多く行われるようになった。今言われているstandard edgewiseとは、このような時代背景の中で概念が確立し始めた。
現在では、ニッケルチタン系のワイヤーの使用により従来のエッジワイズ方でも弱くて持続的な矯正力を発揮することが可能である。なお、ベッグ法では、歯の移動方式を歯体から傾斜にしたためエッジワイズブラケットを用いないことに大きな特徴がある。
standardとの意味は何か?
歯のコントロールをthree planes of spaceの中で確実に行うためにはedgewiseのブラケットを使用し、ループを極力用いないで、弱い力を応用する方法が必要と考えられた。それには太いワイヤーが入らないようにすればよいと考えたわけである。したがって018 slotを用いて、Tweed法に準じたテクニックが考え出され、これが一般的となり、今日まで引き継がれているのである。
What is ‘standard edgewise’?
・edgewise bracket (018 slot)
・mm from the edge or cusp tip for the placement
・wire forming emphasized
・stainless steel emphasized
・stainless steel wire
・2-step retraction
・closing loop system
・tight ligation with ligature tie wire
・heat treated wires
・standarized treatment goals etc
参考: standardの意味は: approved model, rule, principle
normal or normal requirement, level
ワイヤーベンディングが強調された時代
日本では、このような方法が1970年代ごろから行われ、1980年代は全盛期を迎えたと考えられる。現在でも多くの大学で新人教育においてこの方法が教えられ、また一般矯正開業医においても行われていることからとedgewise bracketを用いた最も一般的な基準的な方法としてstandard edgewiseと呼ばれていると考えられる。したがって、大学での新人研修、各講習会においてはどちらかというと診断よりもマニュアルに沿ったwire bending が強調され、上手にwire bending できる人が優秀な矯正医であるとされていた。そして、Tweedの影響を強く受けた人々によって治療のゴールまでも画一化されてしまったのである。すなわち、個々の患者の有する問題点を考えるのではなく、ステレオタイプ的に側貌の改善、IMは90°とするなどの治療目的をすべての人に当てはめたのである。
監修 葛西ジェム矯正歯科