マルチブラケット装置の変遷
2023.09.28コラム
マルチブラケット装置の変遷
SWAが登場するまでのedgewise applianceの歴史的流れ
・特にedgewiseという言葉が使われるまでの歴史につて
・Standard edgewiseとは何か?その方法のベースとなっているものは何か?
・いわゆるStandard edgewiseといわれる装置の出現をもたらした背景とは何か?
SWAの特徴
・022x028 slotと018x025 slotの違いは何か?
・SWAのブラケットのデザイン、制作上の特徴は何か?
・ブラケット・バンドポジショニング
・リトラクションの方法
・結紮法
・Ni-Tiの応用法
・prewalded-band,preformed-wire,pretorqued-brecketの使用法
1.edgewise装置出現までの装置やテクニックの歴史
・E-arch appliance
・pin and tube appliance
・ribbon arch appliance 022x036
・edgewise appliance 022x028
1728年、すでに抜歯をして歯を移動する方法がPierre Fauchardの後継人達によってlabial applianceとして試みられていた。
E-arch appliance:1887年、expansion arch
咬合主体論:line of occlusion、すべての歯が調和のとれた咬頭嵌合の状態にあると
その時 正常咬合となり、顎骨の成長発育が促進されるとし、抜歯不可論
が唱えられる。
Pin and tube appliance:1912年(より3次元的な動きをさせるような試みをした)
Ribbon arch appliance:1916年、022x036(角ワイヤー)を用いて3次元的な動きを試みたが、ワイヤーはflatwiseで用いていたため歯の3次元的コントロールが不十分だった。
2.edgewiseとは
Edgewise appliance:1929年に022x028に変更し、唇側からワイヤーを挿入するようにデザインを変え、ここに今日のedgewise applianceの原型ができた。すなわち、edgewise applianceとは、edge forward(edgeが前に向いているタイプのブラケットrectangular wireを挿入する方法の総称といえる。
3.edgewise法とは
そもそもAngleアングルは、歯列を拡大することによって非抜歯で正常な咬合関係を達成しようとして装置を開発してきた。Angleが非抜歯で治療するとするなかで、Caseらは抜歯の必要性を説き、Dewey&Caseの有名な抜歯・非抜歯論争(1911年)が起きた。その後、Angle自身も抜歯の必要性を認めるようになった。特に、Lundstrom(1925年:思想基底論)、Broadbent,Brodie,Downsによるセファロの発展が抜歯の必要性を決定づけた。
皮肉にも非抜歯を目的として抜歯症例のedgewise applianceとして治療方法が体系づけられ、今日言われているstandard edgewise法の基礎が築き上げられた。
4.Tweed edgewiseとは
一つの基準に沿って、すなわち、A-P, Transverse, verticalの関係において歯の移動を行うためにfirst, second, third order bendなるワイヤーベンディング法を考案し、edgewise bracketを歯面位置付け、歯の移動を3次元的にコントロールしようとする治療体系が確立した。Edgewise bracketを用いての矯正治療の流れを体系づけていたのがTweed(1944年)であり、このテクニックが今日のstandard edgewiseの基礎となっている。
Tweed techniqueツイードテクニックの特徴
・edgewise bracket(022x028 slot)
・wire bended in three orderbends
・stainless steel wire
・anchorage preparation
・two-step retraction
・closing loop system
・extraction
・standardized treatment goals
Angleがedgewise bracketを考案した頃には、貴金属が矯正材料として用いられていたが、Tweedらによって体系づけられたedgewise法では、ステンレス鋼ワイヤーが主流となり、同じワイヤーでも機械的特性が非常に異なり、同じ022 slotのedgewise bracketでも強制力がかなり強く、その過度な矯正力にたいする批判が沸き上がってきた。
監修 葛西ジェム矯正歯科